生ジンベエザメ

ツアーの表題は「ジンベエザメと泳ごう」となっているがダイビングのライセンスを持っていない人間は網の中への進入は許されず網に外側から掴まりながら中を覗くという行為にただただ徹するのみとなった。とはいうものの遠巻きに見ていてもさすがにデカい。この日午後に訪れることとなる美ら海水族館にいる6mのジンベエザメを軽々と凌駕するビッグスケール。現地ダイバーが我々の目の前に撒いてくれたオキアミ目当てに真正面から大口を開けて向かってくるサメに仰天した隣のムスコが、「おぉぉぉ」という食われる前の断末魔の叫びを漏らし網から手を離してしまい流されそうになる珍事も。前日のシュノーケリングでは寄ってくる魚にいくらジャブを出しても全く触れることができなかったがこの日はサメにもわんさか集まる他の魚にもお触りし放題。思えばこれが伏線だったのだ。そしてサメの肌はやっぱり鮫肌なのねん。
迫り来るジンベエザメ

しかしなぜ写真を2枚しか掲載できないのか。ダイビングにカメラを持参できることを想定しておらず1台は前日のケラマでその多数を消化したため残り2枚になってしまっていたこと。そしてもう1台、残数12枚だったカメラの顛末はというと・・・
ジンベエザメと戯れること15分ほど、残念ながらも制限時間を超えたうみんちゅたちはダイバーに付き添われ1人ずつ船へと戻ることになった。最後に船べりのはしごを上り太陽がサンサンと降り注ぐフェリーの上で疲労困憊の様相を顕にする父ちゃん。残数2枚のカメラは自らが保持し、もう1台を他の3人で使い回そうというシナリオを画策していたためその最終カメラマンが父ちゃんだった。「どうよ、ちゃんと撮れたん?」。ぐったり気味の本人もお構いなしに写真の成果を期待する。
「やってもうたかもしれん」
目をギョロつかせながら質問とはてんで見当違いの言葉を発する父ちゃん。何事かと理解に苦しむ一同は会話を中断し冷静に視線を落としてみた。すると手首にカメラのストラップがないことに気づく。もちろんその先に紐づいているはずの本体の姿も。「あれ?カメラどこ置いたん?」
「魚に持っていかれたかもしれん」
今度は一転、こちらが目をギョロつかせる側に回り発言の真相を事細かに追究し始めた。眼前にオキアミを撒かれお魚天国になった海中で網の隙間から手を差し出す男たち。あろうことか、父ちゃんは手首にカメラを巻いた側の右の手で本能の赴くがまま魚へのタッチを試みたらしい。勢いよく放たれた右ストレートの推進力にカメラも追随し当然前方へと重心が流れる。同時に浅く保たれていたストラップが制御を失い惰性に導かれるがまま手首から手の平を伝いカメラは主を置き去りにして自由の身に・・・。
「かもしれんって何なんだよ!?」
「いや、上に行ったらあるかなと思って」
「あるわけねえよ!」
滔々と釈明会見の聞き出し役に徹していた3人だったがここだけは声色が揃っていた。海中で網から手を離した途端にボンベを背負った人間の身ですら彼方に運ばれそうな急流の黒潮の中でわずか15cmほどのプラスチック体がその状態を維持できようはずがなかった。こうしてダイバーに撮ってもらったこの旅唯一である4人揃い踏みのダイビング写真やケラマのロクセンスズメダイとの共泳写真は海の藻屑となった。「やってもうたかもしれん」と言い放った時のあの表情、一生忘れることはないだろう(笑)。太平洋岸もしくは漁の最中でコダックの使い捨てカメラを見つけた方、現像して汚い4人が写っていたらこちらの管理人までご連絡くださいまし。
こうして波乱万丈小ネタ満載の南国行脚もいよいよ終幕に。シュノーケリングにジンベエザメ、沖縄観光に琉球料理と初めての来訪で感銘を受けるところは多数あったが、この旅一番の立役者はやっぱり行く先々で必ず主役たちを食うほどのハプニングを次々と起こしてくれたこの人物しかいない。というわけで表彰。このカットも枚数が貴重な写るんですを海中で己に向けて使ったものだとか。その類まれなるユーモラスな感性は閉口を通り越して賞賛に値するわ、まったく。そんな愛されキャラの父ちゃんに乾杯。
MIP男

振り返ってみると写真ベースで4日間振り返ったもののネタのお披露目に終始していて自分の感想をほとんど述べてないことが明白に。まずこれまでの日記を読んで質問をくれた方への注釈から。ストーリーに登場した「父ちゃん」と「ムスコ」が実の親子ではないということと同行したその他約一名を便宜上「こげ茶」と称したが自分もそれと同じくらいのこげ茶民族であるということ。
さて、宿泊したのが北谷だったこともあり米軍基地に囲まれたあの近辺の大通りにはシーサーなどどこ吹く風と言わんばかりにアメリカの街を連想させるショップやアパートが軒を連ねている。車窓からそれをぼんやり眺めていてふと頭に浮かんできたのはイギリスの街並みとの対比だった。フロンティアスピリットに則り近代ナイズされたアメリカに対して中世の情緒を今でも至るところに残すヨーロッパ。やはり自分はアメリカには興味がなくヨーロッパの風情が好きなんだなぁということを改めて感じさせられた。あと、沖縄の歴史に余りにも無知だったことも。
しかし海はとてつもなくきれいだったし青い空と澄んだ空気にまどろみ当初の目的は十二分に果たせたものと思う。写真からしてもイギリスより沖縄の方がフォトジェニックなシーンが多彩であることが皮肉に思えるくらい。もし今度競馬場も野球場もない彼の地を訪れるとしたら5年後とか10年後とかになるんだろうか。その時は「息子」を連れてジンベエザメの前でただ一人夢中になって自慢してるんだろうな、きっと。
ふぅ、これでやっと気持ちを北に向けられるど〜。最後まで目を通してくれた皆様、ありがとさんでした。
Fin









































































































































